萩原朔太郎\崩毁的肉身\くづれる肉體
崩毁的肉身
我曾在仿佛正有蝙蝠群生的野原之中
将崩毁而去的肉身之柱眺望。
那在黑暗中寂寥地颤抖着的
在影中蠢动摇曳的亡者散发草般的腥臭
丑陋如同蛆虫腹行过的腐肉。
啊啊在以影拖尾的景色当中
我的灵魂将酥麻的恐怖网罗
那就像已从港口而来 从有着亡灵的遥远群岛横渡而来的船那般。
这并不是风 也绝不是雨
这一切无非是痴缠着爱欲烦恼的黑暗畏惧。
并且我崩毁而去的影子
曾在弄蛇人吹起的愚钝音色中悲伤地哭泣。
くづれる肉體
蝙蝠のむらがつてゐる野原の中で
わたしはくづれてゆく肉體の柱(はしら)をながめた。
それは宵闇にさびしくふるへて
影にそよぐ死(しに)びと草(ぐさ)のやうになまぐさく
ぞろぞろと蛆蟲の這ふ腐肉のやうに醜くかつた。
ああこの影を曳く景色のなかで
わたしの靈魂はむずがゆい恐怖をつかむ
それは港からきた船のやうに 遠く亡靈のゐる島島を渡つてきた。
それは風でもない 雨でもない
そのすべては愛欲のなやみにまつはる暗い恐れだ。
さうして蛇つかひの吹く鈍い音色に
わたしのくづれてゆく影がさびしく泣いた。