萩原朔太郎\魚と人と幼兒\鱼,人,幼儿
魚と人と幼兒 (人魚詩社の畏友に捧ぐ)
暗くして寂しき南國の夜、
三個の十字架は荒廢せる砂丘の上に建てられたり、
その上に沈默せる三個の死屍、
遠く海軟風の快き微流を感ず。
三種の聲は各々の隔絶せる地位より來り各々異なる音級を有す、
即ち魚は滄海の底にありてソプラノ、幼兒は天上にありてアルト、
人は地上にありてテノール、
何人も彼等の實體を視ること能はず。
合唱
よるがくる、
あさがくる、
よるがくる、
あさがくる。
わがゆくみちは異端の路、
禁制の路、邪淫の路、
感傷の路、狂氣の路、
わがゆくみちは異端の路、
鮮血の路、苛責の路、
ろまんちつくの天界の路、
眞實一路、十字架の路。
よるがくる
あさがくる
さんたまりや